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団塊の世代とバブル崩壊

togetter.com

この記事に

日本の深刻な殺人離れ - Togetterまとめ

面白い。自殺者減ったんだと思ってみてみたらバブル崩壊期以前の水準に戻っただけだった。他殺死亡者は崩壊直後の半分以下に減少してるのに自殺者数は3分の2というのはなんとも切ない。

2016/09/16 17:42

ブコメしたのだが、面白いなあと思って自殺者の年齢のデータを見てみた。

自殺者の年齢帯別の推移を比較

3 年齢階級別の自殺者数の推移|平成25年版自殺対策白書 - 内閣府

このページにあるグラフで1997年頃からの推移を見ると、

  • 15~24歳は1997年に一時増加して減少に転じ、2001年頃からは横ばい。14歳未満はほぼ横ばい。
  • 1997~2004頃まで突出して多いのはその時その時の45~64歳代。2003年をピークに45~54歳は激減、55~64歳は微減しはじめ2008年から激減する。
  • 25~44歳と65歳以上は年々増加していたが、25~34歳は2005年から、35~44歳と65~74歳は2009年から減少に転ずる。75歳以上は2007年頃から横ばい。

という特徴が見て取れる。

それぞれの転機となった年を押さえつつ件の記事のグラフで見てみると、

  • 1997年に他殺死亡者数は増加に転じるが2004年頃1996年水準以下に戻りその後も減少を続けている。
  • 失業率は2003年をピークに減少に転じていたが2008年から増加に転じ2009~2010年をピークにまた減少に転じる。
  • 自殺者は1997年に激増してピークに達した後ほぼ同水準で上下し、2009年から減少に転じる。

ちなみに1997年はバブル崩壊、2009年は民主党が政権に就いた年。

人口ボリュームの多さは馬鹿にならない

2000年、2010年の人口構成のグラフを見ると

http://www.ipss.go.jp/site-ad/toppagedata/2000.png
http://www.ipss.go.jp/site-ad/toppagedata/2010.png

2000年の時点で一番人口が多い団塊の世代は50歳前後、団塊Jr.は25歳前後。それがそのまま移行していく。

  • 2000年頃に人口が一番多かったのは団塊の世代は50歳前後、2010年頃はそれが60歳前後になっている。バブル崩壊時に45~54歳の自殺者数で突出して多いのは人口ボリュームが一番大きかったからと言えるのではないか。
  • 25~34歳の自殺者が減少に転じる2005年は、団塊Jr.のピークが世代の中心を過ぎた時期でもある。

という見方をすると、各世代の微妙な減少開始のタイムラグは、ボリュームの多い団塊の世代団塊Jr.の世代がその世代を通り過ぎていく時期の影響、つまり人口ボリュームの多さが変動に対する影響を大きくしているためとみることができると思う。

1997年以降の自殺者増加のパターンの差はバブルとの関わりの差?

だが、そういう見方でいうと違和感がある部分もある。
例えばバブル崩壊直後に自殺者が急増したのは55~64歳代も同じだという点だ。
また、65~74歳、75歳以上は、バブル直後に急増はしていないが2009年まで徐々に徐々に増え続けている。
それに、人口ボリュームの点では団塊の世代に次いで多い団塊Jr.を含む25~34歳よりもむしろ団塊-団塊Jr.の中間層である35~44歳の方が自殺者数が多いのも興味深い。
これらは人口のボリュームだけでは説明がつかない。

おそらく、バブル当時一番その旨みを味わった=バブル崩壊の悪影響をもろに受けたのは人口ボリュームが多い団塊の世代とその上の世代だったのだろう。バブルは「金が無くても金を借りて金を儲けよう、金がある人間はそれを使ってますます金を儲けよう」という時代であり、一方日本の社会では年齢が高いほど貯蓄が多く、収入も現役であれば年齢に比例しがちであるから、人口ボリュームだけでなく、年齢も影響の大きさに比例していた部分が大きいのだろう。
現役で収入があり貯蓄も多く人口ボリュームも多い団塊世代とその上の世代が初めに大きな影響を受け、その影響が波紋の様にその周囲の世代に広がっていって自殺者数が全体的に増加していったという感じだろうか。

団塊Jrはまだ社会人としては新人の時期で主体的にバブルの影響を享受していたとは言い難い。その中間層は、団塊世代ほどボリュームもなかったし社会的な位置でもそこまで直接的影響を受けるほどではなかったが、収入などは団塊Jr.より高かっただろうから影響も受けやすかったと考えれば上で書いたズレも理解できる。

団塊の世代と呼ばれる突出して人口ボリュームの多い世代が社会の中心を担う時期にバブルが発生しなかったら、その後の失われた20年は存在しなかったということもできるだろう。
だが、バブルとは「時代の空気の増幅」であり、増幅の影響はそれに参与し関わる人間が一人でも多い程等比級数的に大きくなっていくものだから、人口ボリュームが多い世代(彼らは同時に戦後の経済的発展の恩恵を受けた世代でもあった)が存在していたからこそバブルが発生したともいえるわけで、仕方が無かったのかもしれない。

(そういうことで言うなら、2009年からの失業率の低下も、政権政党や失業対策などの違いだけではなく、団塊の世代がかつては現役引退の年とされた60歳に達する頃だったという点も大きかったのではないかという気がしてくる。が、それを書き出すと終わりそうにないので終了。)

余談:安定は成果主義を 不安定は年功序列

ところで、これは余談だが(というか全部余談みたいな文章だが)色々なグラフを見ていて

blog.livedoor.jp

ここにある「成果主義年功序列どちらがいいか」のグラフと

図録▽正規雇用者と非正規雇用者の推移

ここにある「正規雇用者数と非正規雇用者数の推移」のグラフを見ていたら、非正規雇用者率の変動と年功序列を求める率のグラフが微妙に連動しているような気がした。
非正規雇用率は1990年から年々増加しているが、2008年をピークに若干減少し2011年にまた増加に転じて2014年以降はほぼ横ばいとなる。
年功序列を求める人の率は2002年頃から増加し始め、2009年にピークに達し2011年から減少に転じ2014年以降また増加する。
調査の母数も調査方法も全く違うものなので単純比較すべきものではないのだが、2009年、2011年、2014年という区切りでどちらも変動しているのが興味深い。2009年一時的に正規雇用率が増え年功序列を求める意識から成果主義への移行を促し、再び非正規雇用が増えたことが年功序列を求める人の増加につながったとみると、つまり「安定した状況では成果主義を求め、不安定な状況では年功序列を求める。」ということも言えるわけだからなんとも皮肉な話だ。